ニンニクの【すべりたくない話】
俺の親父は昔から少しズレている。
天然...というのだろうか。いや、パーマだけか。
人の話を聞かず、せっかち早とちりはお手の物。
物事の先を考えたり、前の事に囚われたり。
更にはかなりの心配性で何事にも石橋を叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて渡りたい柄。
だが叩いてながらも別の事考えているものだから叩ききれてない。
結果、何かと忘れ物やら、ちょっとした家庭騒動になる。
話もよく噛み合わなくなるってもんだ。
俺は幼き頃から、そんな親父に嫌気がさしていたのだった。
だが、20歳を過ぎた頃から思うようになる。
俺はしっかり親父のキンタマから出てきたのだと。
親父の性格を100%受け継いでいたのだ。
上記の親父のクセ、即ち息子にん♡にくの事である。
だが、親父は一周回って可愛らしい。
そして何より、突然と面白い。
以前家族で愛知旅行に行った時の話をしよう。
俺らにん♡にく一家は繁華街で何を食べるかと話合っていた。
『ひつまぶし』とかどうよ。
いやぁ、ちょっと高いな。
『味噌カツ』は?
この前食ったべ。
家族会議は難航し、辺りを見渡すとチェーン店の『しゃぶ葉』がそこにはあった。
シャブにするべ!シャブ!
夕刻の名古屋繁華街でシャブ連発。
田舎もんの俺らは冷や汗をかいた、という話である。
前置きが長くなったが
とまぁ、こんなにも可愛い親父なのである。
ここからが本編。
『親父のメアド』
と題して【すべりたくない話】をしよう。
これは高校生の頃の話。
中学終わりからAmazonの便利さを知った俺は、よく家族共有PCで良い商品はないかと探し回っていた。ヴィレッジヴァンガードに置いているような、一見変わった面白い雑貨を探し、集める事に没頭していた。
ホタテの形をした丼ぶり皿だったり、便器の形をしたカレー皿だったり。
要らない、不便、ダサい。
実用性に欠けた商品、ネタ性重視の商品を探していた。
そして購入するときも同じく、リビングに設置している家族共有PCを使用していた。
勿論、Amazonのアドレスも家族共有だった。
何回かログインする為、メールアドレスとパスワード入力を繰り返していると、
気づいたことが。
親父のメールアドレスだ。
親父は、
『〇〇(息子娘の名の一部)fannypapa@〜』
というメールアドレスを使用していた。
俺がガラケー時代から知っている、親父の老舗メアドである。
簡単に直訳すると、息子娘の名前&面白いお父さんという意味になる。
なんて、子供想いの良きパパなのだろう。
でも、自分で面白父さんと名乗り上げるな!と、ツッコミを入れたくなるが。
だが、気になったのは英語の綴りだった。
中学高校で英語も学び始め、ある程度分かってくる。
fannyて、間違ってないか? と。
aじゃくて、uじゃなかったか? と。
遂に気づいてしまった。
家族用ログイン等で多用していた親父のメールアドレス。
おい、綴りが間違っているぞ!
これは親父に報告しなくては。
調べてみるとやはりfunnyだった。
親父はかつてイギリスに出張していたこともあり、子供達の前ではカッコつけていたいのであろう。
だが知らん。
このままミスしたメアドを使用し続けて、他の大人達から注意される方が恥ずかしいに違いない。
ここは息子として言ってあげるのが筋だろう。
ここでとんでもないことに気づく。
間違えていた方のメールアドレスの意味。
Fanny
【名】
- 尻
- 女性器、セックスの対象としての女性
親父よ。
息子娘&女性器パパと名乗っていたのか。
親父よ。
それで町内忘年会の参加不参加を返答していたのか。
親父よ。
それで父母会長を勤めていたのか。
俺は正直に伝えた。
そしたら親父は笑っていた。
その笑顔は忘れない。
少し、恥ずかしそうだった。
尚、親父は現在もそのエロ・メアドを使っている。
もう化け物である。
少しでも笑ったら、ラーメンを食べよう!